Japanische Klassiker mit Furigana
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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Lesen Sie あさひの鎧 (あさひのよろい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.520 Zeichen · 475 Bildschirme
宮家は比叡山の元天台座主、僧家としても智行兼備の御方、何んのご躊躇するところもなく、珠数サラサラと押し揉んで、千手陀羅尼を高らかに読まれた。
部屋には兵衛の妻焚野をはじめ、兵衛にとっては叔父にあたる、竹原入道の娘の呉服や、腰元などが並居たが、宮家のお声の朗らかさと、その風采の尊げなのと、その容貌の端麗さにうたれ、
(病人は治るに相違ない)
と、信仰の心を持つようになった。
なかでも呉服は、処女心から、若い先達の優雅かぎりない、その姿に魅せられたものか、眼に愛慕の光を宿し、頬に羞恥の紅潮をさして、まじろぎせず、宮家を見守った。
宮家の唱名の後につづき、
「摩訶般若波羅蜜多、十六善神哀愍覆護、滅悪生善経々部、明王部天童部、七曜九曜十二宮、二十八宿三十番神、修行者猶如薄伽梵」
と、八人の山伏も珠数おし揉み、一斉に唱えて責めかけた。
と、にわかに戸野兵衛は、額から汗を流し、寝具から半身を起こして叫んだ。
「あら苦痛や、堪えがたや! 熊野三所の権現が、われに退けと責めかくるわ!」
が、それも一時で、やがて枕へ頭を落とすと、子供のように眠り出した。
そうして、翌日まで眠りとおし、眼がさめた時には、正気になっていた。