Japanische Klassiker mit Furigana
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
Lesen Sie さぶ von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 210.521 Zeichen · 415 Bildschirme
「それよ、そのうるせえな、よ」と女はせきこんで云った、「両国橋のとこでさ、あんたあたしに云ったじゃない、うるせえなって」
「ああ」とさぶがまのびのした調子で、盃を持ったまま頷いた、「――傘だな」
「傘よ」と女が云った。
「五年まえだ」とさぶが云った、「そうだ、雨が降っていて、おまえさんは穴のあいた傘をさしていたっけ」
「ほんと、そのとおりよ」
「なんの話だ」と栄二がきいた。
「ほら、五年めえにおれが」と云いさしてさぶは口ごもった、「ほら、東両国から横網のほうまで、二人であるいてったことがあるじゃねえか、雨に濡れながらさ」
栄二はいま眠りからさめたような眼で、そこにいる女に振り向いた。
「ああそうか」と彼は云った、「あのとき傘をさしていけって、うるさく云った子がいたっけ、――それがおめえか」
「名まえはおのぶ」女は八重歯を見せてにっと笑い、おじぎをした、「どうぞよろしく」
「おれは栄二、こっちはさぶっていうんだ、あのときはちびだったんで思いだせなかったが、大きくなったな」栄二は自分だけの腹いせめいた気持でにやっとした、「――その八重歯には覚えがあるよ」
「あらいやだ、いじわるね」