Japanische Klassiker mit Furigana
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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
Lesen Sie それでも私は行く (それでもわたしはいく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.708 Zeichen · 181 Bildschirme
「知らん!」
「流行歌手の望月三郎!」
「…………」
「美男子ですわね」
「…………」
「随分女たらしだと言いますのよ」
「…………」
「木屋町の小野屋旅館ってご存知ですか」
「いや、知らん」
「お行きになったんじゃないんですか。今日の昼間――」
「わしが……?」
「ええ」
「いや行かん」
「そうですか。でも、おかしいですわね。あたし、今日、小野屋旅館に人を訪ねて行ったんですのよ。そしたら、小郷さんが御面会ですって、番頭の声が隣の部屋で聴えていましたわ」
「いや、行かん」
ターンしながら、小郷は、
「――隣の部屋って誰の部屋だ?」
「たしか望月の泊っている部屋だったかしら……? そういえば、女の方の声も聴えていましたわ」
わざと早口に弓子は言った。
効果はてきめんだった。小郷はまたステップを間違えた。
その時「キス・ミイ・アゲン」の曲が終った。
何思ったか、いきなり弓子は、
「ありがとう」
と、言うと、小郷からはなれて、ひらりと身をひるがえし、ホールを出て行った。
四
にやりと不気味な笑いを浮べて、キャバレー歌舞伎の玄関を出た途端、弓子は一人のみすぼらしい男がキャバレーの前にしょんぼり佇んでいるのを見た。