Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Lesen Sie スウィス日記 (スウィスにっき) von 辻村 伊助 (つじむらいすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 216.275 Zeichen · 410 Bildschirme

Aozora Bunko

紅茶の御かげで気分も大分よくなった、ことによると空腹のせいであんなに苦しかったのかも知れない、夜中にまた熱でも出るといけないと云うので、フォイツを呼んで貰って、同じ室の隅に寝かしたが、これは横になるともう大鼾で、邪魔になるばかりで、何の役にも立たなかった。

雨は思い出してはどっと降り、と、またぱったり止んでしまう。夜は次第に更けて、アヴァランシュの遠く近く土の底から響くのが、もの寂しくもなつかしい。

腕から肩へ巻いた繃帯が胸を圧して、寝苦しくて耐らないのに、フォイツの鼾がまた底意地わるく耳について、いまいましくてならない。

たった四日前に泊ったこの室に、今夜、私一人帰って来て、たとい連れ立った人達に、非常な怪我があったにしても、御互いに命生きて麓へ帰る今となっては、幸いにもグロース・シュレックホルンの絶巓を極めて、しかも九死に一生を得たと云う、不思議な経験が、いくら考えてもうれしくてならない。人は恐らくそうであろう、生の執着に、よし多少の厚薄はあっても、ふり返って身の上を思うには、余り馬鹿気ている、此の偉大な山岳の間にあって、又人の恐れる死の刹那の、余り急に、余りに不用意な瞬間に襲われて、知覚する暇もない間に過ぎ去ったこの経験は、ただ感謝の眼を以て迎える外はない。