Japanische Klassiker mit Furigana
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Lesen Sie 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) von 牧 逸馬 (まきいつま) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 251.305 Zeichen · 498 Bildschirme
一時十分過ぎである。煙りのような真っ直ぐな白い火の棒が五本、続けざまに彼方の船に立つのを見た。
「花火信号のようだね」
「三分置き位いに打ち揚げています」
「何かの合図かも知れないが」ストウンは首を捻った。
「別に危険に遭遇しているようにも見えない。海はこんなに穏やかだし――」
「兎に角、本船の注意を惹こうとしているらしいですね」
こんな会話が二人の間に交されたが、「注意を惹こうとしていた」どころか、その二時間と四十分のあいだ、タイタニック号は、襲い掛る死の影の下に悶え続けていたのだ。
がキャリフォルニアン号の二人は、そんなに遠くないところから、そうとは気づかずにぼんやり眺めて、
「何をあんなに発火信号みたいなことをしているんだろう――?」
「念のため、船長に報告したら何うでしょう」
となって、ストウン二等運転士が船長室のドアを叩く。船長は、暖い寝台を離れて甲板に来てみようとはしなかった。寝具の間から眠そうな声で、
「乗組員が何か下らないことで合図でもしているに相違ない。うっちゃって置け」
斯うしてこの時タイタニックは、救われれば救われた好機を永久に逸したのだ。