Japanische Klassiker mit Furigana
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Lesen Sie 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) von 牧 逸馬 (まきいつま) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 251.305 Zeichen · 498 Bildschirme
が、ゴシップは喧ましくなる一方である。
「あの英吉利人は、気が違って自殺したのだ。その幽霊が、空気のように十四号室に残っている。部屋を閉めきりにしたって幽霊のことだから、自由に他の室へ出掛けて行くだろう。ホテルを売って立ち退くのがマダムのためだ」
という、取り沙汰だ。
隣家の支那人骨董商リイ・ハン・フウは、事実、値段によっては居抜きでホテルを買ってもいいと、価額の相談まで持ちかけて来たが、女将は、一言の下に拒絶した。そして、ショウルを引っ掛けて警察へ走ると、前夜自殺室に眠った勇敢なる巡査カミィルを掴まえて、
「金曜日の晩、もう一度あの部屋に泊ってみて下さい。また百法差上げます」
カミィルは、大よろこびで膝を叩いた。
「承知しましたとも、マダム。百法ずつ下さるなら、幾晩でもお望みの間ずっと泊り込みますよ」
そこで、その金曜日の夜、カミィルは意気揚々とホテル・アムステルダムへやって来た。マダム・セレスティンの心尽しの晩餐だ。取って置きの葡萄酒の一壜だ。カミィル巡査はすっかり上機嫌になって、幸運に感謝しながら、やがて就寝時、三階の十四号室へ上って行ったまではいいが、次ぎの日の土曜日の朝、巡査は、屍骸になって前の二つの自殺と完全に同じ状態で窓掛けの鉤にぶら下がっていた。