Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
――相手はこっちを知らないだろうが、得石のほうでは万清楼で、二度か三度みかけたことがあった。久世出雲守の家来で、ここから堀ひとつ隔てた、北新堀の下屋敷に勤めている、名は藤井新五郎、酒癖が悪いので、万清楼でも嫌われ者だったが、おかねのほうでのぼせあがっていたことは、女中たちなかまの評判であった。
「いつまでなにをしているんだ」藤井は得石の顔をみつめながらおかねに云った、「ひとを置きっ放しにして、こんなところでいちゃついているなどとはよろしくない、さあ、いいかげんに下へいって相手をしろ」
「あたしはいきたいんだけれど、この人が文句を云っていて」
「文句だ」と藤井が云った、「なんだその男は、客は自分一人だとでも云うのか」
「いいえお客じゃないんです、このうちの主人ですよ」
「主人だって、これが」藤井は左右へよろめきながら、眼をほそめ、唇を舐めた。すると険のある眼がぎらぎらし、頬の肉がひきつった、「これがあの強欲医者か、医者をしながら料理茶屋をやらせ、儲けはごっそり持ってゆくという、あこぎなやつか」
「おかね、下へ――」得石は眼くばせをしながら云った、「下へお伴れしてお相手をするがいい、今日はもう帰るから」