Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
これはうっかりするとこっちが潰れてしまうぞ、と彼は思った。
「よろしい、わかりました」と彼は口髭を指の背で撫で、酔っていない証拠をみせようとして膝を正した、「よくわかりました、貴女が本当にそのつもりなら、こんどこそ必ず持って来てごらんにいれます」
そして突然、倒れるような身振りでおみのの手を掴んだ。おみのは拒まなかった。手を掴まれたまま躯を反らせ、「痛いわ」と眉をひそめながら、立ちあがった。
「おみのさん」彼は伸びあがった。
「ここはいや」とおみのは囁いた、「あたし二階へいってます」
「本当だな」
おみのは眼で笑いかけた、「女中さんにそう云ったら、来てちょうだい」
「まさかまた、逃げるんじゃあないだろうな」
おみのは微笑しながら、掴まれている手をそっと放し、ゆったりとした歩きぶりで、廊下へ出ていった。
「また逃げられたかな」彼は自分に云いながら燗徳利を持った、「いや、そんなことはあるまい、今日はいつもとようすが違っていた、いくらなんでも今日こそは、――」
燗徳利には酒がなかった。得石はそれを置いて、乱暴に手を叩き、返辞が聞えないのでまた叩いたが、その動作で坐った躯がぐらっと傾き、倒れそうになって左手を突いた。