Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
と云って彼は咳でもするように、がくんと上躰を揺すった、「――へ、いくら疑ったところで証拠がない、証拠がなければどうしようもありませんからねえ」
「その人は本望だと云ったとしても」とおみのが訊いた、「死なれてみれば、先生だって悪かったなと思うでしょう」
「私が、――悪かったって」
「人間一人が死んだのよ」
「冗談じゃない」彼は笑った、「おみのさんなどはおぼこだからまだわかるまいが、たいていの女が、本当のよろこびを知らずに一生を終るものなんだ、たとえ責め殺されても本望だと云ったのは、その女の本心なんですよ」
「では悪いとは思わないんですか」
「むしろ慈善をしたと云いたいくらいです、貴女にもやがてわかるでしょうがね」
「召し上れ」とおみのは酌をした、「――むさし屋のときもそんなふうでしたの」
彼は「ちょっと」と云って、慎重に立ちあがり、酔わないふりをするために、ゆっくりと濡縁へ出ていった。
「お父つぁん」とおみのは仰向いて、そっと囁いた、「あたしに力を貸して下さい」
戻って来た得石は、坐ろうとして重心を誤り、だらしなく横ざまに倒れた。
「いやだわ、そんなにお酔いになったの」