Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
――若い男は黙って反対のほうへ遠のき、佐吉はおしのの側へ来た。
「おっ母さんのこと知ってるでしょ」とおしのは低い声で云った、「あんたのせいにするんじゃないから正直に云って、東蔵っていう役者と江ノ島へいったこと知ってるわね」
「弱ったな、いいえそりゃあもう決して、隠しだてなんかしやあしませんが」佐吉は頭を掻き、いかにも閉口したように肩をすくめた、「その、東蔵という役者はあそこにいるんで、ええ、いまあっしと話していたあの男です」
おしのは振り返って見た。その若い男は、店の前に立ててある松飾りの、松の葉を弄っていた。
「屋号は沢田屋、島村東蔵といって、女形ではいま売出しの」
「では誰といったの」おしのはまた遮って訊いた、「誰、どういう人」
「菊太郎といって、子役を勤めていましたが、去年の顔見世が終ったあと芝居をやめて、それ以来ごしんぞさんのお世話になっていたようですから、もし江ノ島へおいでなすったとするとその菊太郎と」
「うちはどこ」とおしのは云った、「その菊太郎という人はどこに住んでいるの」
「その、それは」と佐吉は吃りながら云った、「たしかずっと、亀戸の寮のほうにいるとかっていう、あっしはよく知りませんが」