Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

「おそのが来ないなら、こっちでゆこう」と喜兵衛は云った、「どうしてもひと言、生きているうちに云ってやりたいことがある」

「だってお父つぁんそれはむりよ」

「いや、戸板に乗せてでも伴れていってくれ、どうしてもひと言、あれに云ってやりたいことがあるんだ、これを云わずには死にきれない、たのむ、おしの」

「もういちど使いをやるわ」おしのはけんめいにとめようとした、「そんな躯で亀戸へゆくなんて、お父つぁんが苦しいおもいをするだけじゃないの」

「苦しいおもいには馴れてる」喜兵衛は歯をむき出した、「二十年ちかいあいだに、死ぬより苦しいおもいを幾十たびとなく味わった」と喜兵衛は云った、「おしの、私はどうしても寮へゆく、戸板の支度をするように云ってくれ、たのむ」

おしのは立ちあがった。

寮へいっても母はまだ帰ってはいないだろう。いっそ本当のことを話してしまおうか、そのほうがいいだろうか。いや、とおしのは首を振った。それはあとでもいい、父が寮へゆくまでに帰るかもしれないし、もし帰っていなかったら、そのとき話してもおそくはない。そう心をきめて、番頭の嘉助と徳次郎に父の望みを伝え、戸板の支度をするように頼んだ。