Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
「そうじゃないわよ」と菊太郎が身動きをしながら云った、「あたしさっきから拝見しているんだけれど、おしのさんはきりっとしてらっしゃるわ、たとえおんば日傘で育っても、おしのさんならそのくらいの甲斐性はきっとあると思うわ」
あら、ずいぶん肩を持つのね、あんたおしのに惚れたんじゃないの、とおそのが云った。そうなの、と菊太郎が答えた。あたしすっかりおか惚れしちゃったわ。云ったわね。だってほんとですもの。云ったわね、この口でそんなことを云うのね。痛い、痛いわよごしんぞさん、まあひどいしと。――おしのは躯がふるえだし、絶叫したいという衝動を抑えるために、両手の指を力限りにぎり緊めながら、静かに立ちあがってその部屋を出た。
「どこへゆくの」とおそのが呼びかけた。
「ちょっと――」おしのは振り返らずに答えた、「すぐに来るわ」
おしのは八帖へいった。
――堪忍できないわね。
火鉢の脇に坐り、仕掛けてあったゆきひらをおろすと、父の死顔に向かって、呼びかけた。たった一人の娘であるあたしまで騙しておいて、云いわけをしようともしない。おそらく済まないとも思ってはいないようだし、ことによると騙したという記憶すらないのかもしれない。