Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
「そんなふうにからむんなら、あたし帰るわ」
「図星というわけですか」
「いいこと」女は坐り直した、自分では無意識かもしれないが、坐り直すと却って、躯の線のやわらかさと、嬌かしさとが際立つようにみえた、「いいこと、お師匠さん」と女はあまえた口ぶりで云った、「あたしは芝居は好きだし、見ることはむろん見るわ、沢田屋の舞台だって見ているけれど、役者衆とは誰に限らず、これまでいちども逢ったことなんかありゃあしなくってよ」
「それはお師匠さんとこんなふうに逢っているんだから」と女は続けた、「どんな浮気者と云われてもしかたがないでしょう、でもお師匠さんにそんな女だと思われるなんて辛いことよ」
「それが本当なら」と男が云った、「どうしていつまでこんなふうに、蛇のなま殺しのようなめにあわせるんですか」
「お師匠さんにはあたしの気持がわからないのね」
「おりうさん」と男は手を伸ばした。
女は片手を男に与えながら、躯は反対に遠のけて、「はあ」と熱い太息をもらした。
「触らないで、お師匠さん」と女はふるえ声で云った、「ごしょうだから触らないで、お師匠さん、それでなくっても辛抱が切れそうなんですもの、お師匠さんに触られたらおしまいよ」