Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
「ちょっと、ちょっと待った」彼は手をあげて遮った、「そんないったいそんなことを誰から聞いたんです」
「名がわかれば云いぬけができると思うんですか」
「私は芸人です」と彼は坐り直した、「芸人にごひいきは付き物だし、ごひいきなしに芸人は勤まるものじゃあありません」
「むさし屋の人もごひいきだけだったの」
「少なくとも、おりうさんを知るまえのことです」
「そう固くならないで」おりうは微笑し、膝ですり寄って燗徳利を取った、「お酌をしましょう、あら、手が震えてるじゃないのお師匠さん、あたしやきもちをやいてるんじゃないのよ、ただ本当のことが知りたかっただけ」
「本当のことを云いましょう」
「そんなに固くならないで」とおりうはまた微笑した、「どうぞもう一つ」
「おりうさんは」盃を下に置いて彼は屹となった、「私の云うことを信用してくれないんですか」
「作り話を信用しろって云うの」
「むさし屋のごしんぞさんとは、慥かに逢っていました」彼は証言するように云った、「けれどもそれは愛情でもなんでもありゃあしない、ごひいきと芸人のつきあいというだけなんです、貴女だっておよそ察しているだろうけれど、芸人はごひいきのうしろ楯と、引立てがなければやってはゆけません」