Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
法輪寺と法起寺の塔が眼前にみえる。陽炎のたちのぼる野辺に坐して、雲雀の空たかく囀るのをきいたこともあった。嘗つてここに飛鳥びとが様々の生活を営んでいたであろうが、彼らの風貌や言葉や粧いはどのようなものであったろうか。
太子の摂政時代は内外ともに多事であったが、それにも拘らず鷹揚に深い瞑想は、この野辺のあたりにもなされていたのであろうか。いかに昏迷と騒乱があったにせよ、そこには、一つの出来事、一つの問題に向っての、しずかな凝視と味いと沈思と――かかる悠久の時間というものはあったに相違ない。嘆きのある折も、その嘆きは虚空の涯にまで漂い行くような、切に深遠なものだったろうと思う。人間の煩悩を深く省察された太子は、それゆえ人間への悲心と凡夫の自覚とをもって飛鳥の野を彷徨われたであろうが、その御姿が、そのまま聖者の気高さをおのずから具現していたと想像されないであろうか。
たとえば御著「維摩経義疏」のなかで「道法を捨てずして凡夫の事を現ずる是を宴坐と為す」という維摩の言葉に対し、次のように感想を述べておらるる。
「道法とは謂く聖法なり。言ふこころは、聖法を能くすと雖も、亦俗法の中に凡夫の事を現じて、機に随ひて物を化するを乃ち真宴と名づく。