Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
私はいつもその日を想い起す。昭和十二年の晩秋、夕暮近く、木津川の奔流に沿うて奈良へ辿りついたが、これが大和への私の初旅であった。それまで大和の風光や古寺の美は聞いていたけれど、容易に訪れようとはしなかった。北国に育った私は東北地方や津軽海峡を渡るのをさして億劫に思わぬが、まだみぬ南の古都は、遥かにとおく雲に隔った異郷のように感ぜられ、また早い青年時代の自分にとっては、古仏などあまり心にとめなかったのである。むしろ西欧の古典美術に憧れ、伊太利へだけは是非とも行きたいと思っていた。希臘やルネッサンスの彫刻の方がはるかに私の心をひいたのである。
尤もそれらの彫刻や像は、写真で知っているのみだったから、判断も曖昧なものには相違なかったが、正直なところ、私は仏像にどうしても親しみえなかったのである。その主な理由は、仏像は人間を行為に誘う溌剌たる魅力にとぼしいということであった。仏像に対していると、彼は自らは語らず、私にのみ多くを語らせようと欲する。私は自分の生存について、環境について、苦悩について、限りなく彼に訴え問うことが出来るが、仏像の表情は何事も答えない。