Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

お浜とても、今まで寝醒めのよいことばかりはなかったのですが、今という今、苦しがる郁太郎の面に文之丞の末期の色がある。天井で噪ぐ鼠の音、それが文之丞の声。屏風の裏、そこから幽霊が出て来るよう。仏壇の中、そこには文之丞が蒼い面をして睨めている。蒲団の唐草の模様を見ると、その蔓がぬるぬると延びて来て自分の首に巻きつきそうにする。鏡台の裏からは長い手が出てお浜の胸や腹を撫で廻そうとしている。針箱の抽斗からはむらむらと雲が出て来てお浜の目口に押込もうとする。障子の破れから今にも鬼が出て郁太郎を浚って行きそうでならぬ。

室の内、どこを見てもここを見てもみんな恐ろしいものばかり。お浜は眼がクラクラして、じっとしていられなくなったので、立って小窓を押しあけて外を見ました。

夜の空気がさやさやと面に当るのでお浜はホッと息をついて、また郁太郎を抱き上げて、窓のところへ立ちながら、

「ほんとに、どうしたのでしょうお医者様は……」

郁太郎は泣きじゃくってピクリピクリと身体を動かすばかり。やはり眼を見開いて、母親の面を睨んでいます。

ちょうど有明の月がこの窓からは蔭になりますけれども、月の光は江川の本邸の内の土蔵の棟に浴びかかって、その反射で見た我が子の面が、この世の人のようには見えなかったので、