Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

まもなくお浜はここへ入って来ました。

「あなた、竜之助様」

「何だ」

「お願いがござりまする」

「言ってみろ」

竜之助は書きかけた筆を置きもせず、お浜の方を見返りもせず冷やかな返事です。お浜の方も何か深い決心があるらしくて、別にくどいことも言わず、これも眼の中はやっぱり冷やかな光で満ちて、

「離縁をして下さい」

「離縁?」

竜之助はこの時、ちょっと筆を休めてお浜を見返り、

「離縁、それも面白かろう」

「ええ、面白うござんす、ずいぶんあなたとは永く面白い芝居を見ましたから」

「ここらで幕を下ろそうというのかな」

「離縁状を書いて下さい」

「誰に断った縁でもない、いまさら三行半にも及ぶまいが」

「そんなら今から出て行きます」

「それもよかろう」

竜之助は、いよいよ冷淡な気色で、

「しかしここを出てどこへ行く」

「どこへ行きましょうとお差図は受けませぬ」

「別に差図をしようとは言わぬ、ただ郁太郎の面倒は頼みますぞ」

「郁太郎はわたしの子ですもの」

お浜はついと立って出て行きます。

お浜は箪笥の抽斗をあけて、あれよこれよと探しはじめましたが、そのうちにふと抽斗の底から矢飛白の袷を引張り出しました。