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Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

お松は今それを聞いた――と自分ではそう信じてしまったらしいのです。

竜之助は手が戦いて猪口を取落した。

その取落した猪口を拾い取ると、何と思ったか、力を極めて、それを室の巽の柱の方向をめがけて発止と投げつける。猪口はガッチと砕けて夜の嵐に鳴滝のしぶきが散るようです。

と見れば、竜之助の眼の色が変っている。

竜之助の眼の色は、真珠を水に沈めたような色です。水が澄む時は冴える、水が濁る時は曇る。冴える時も曇る時も共に沈んだ光があった。今はその光が浮いて来た。

猪口の砕けて飛んだ室の中を、ここと目当のなく見廻した時の眼は、かの音無しの構えにとって意地悪く相手を見据えた時のような落着きがなく、不安と、そうして散漫とがようやく行き渡る。

「うむ――」

額を押えて力なく折れた。

「どうかなさいましたか」

「頭が痛い」

「それは困りました」

「眼が廻る」

「お薬を差上げましょう」

お松はふいと立った。

「いや、それには及ばん」

「それでは、お冷水を」

「何も要らん」

竜之助は額を押えて薬も水も謝絶る。しかしながらよほどの苦しみには、うつむいた面が下るばかりです。

お松は、この時ふいと気がついた、逃げるならこの間である――