Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

女というものは、どこへ隠れても人の眼と耳を引き寄せる。お豊が来て二三日たたないうちに、夜な夜な薬屋の裏手の竹垣には大きな穴がいくつもあいた。ここへ来てから、もう七十五日は過ぎたのに、お豊の噂だけは容易になくなりません。

かの藍玉屋の金蔵の如きは、執心の第一で、何かの時に愁いを帯びたお豊の姿を一目見て、それ以来、無性に上りつめてしまったものです。

事にかこつけては薬屋へ行って、夫婦の御機嫌をとり、折もあらば女と親しく口を利いてみたいと、いろいろに浮身をやつしているので、今ほかの連中はまた一局に夢中になる頃にも、金蔵のみは女の消え去った路地口を、じーっと見つめたまま立っています。

時は夏五月、日盛りは過ぎたが、葭簾の蔭で、地はそんなに焼けてもいなかったのに打水が充分に沁みて、お山から吹き下ろす神風が懷に入る時は春先とも思うほどの心地がします。

「少々ものを尋ねとうござるが……」

一方は将棋に夢中で、一方は路地口に有頂天である。

「植田丹後守殿の御陣屋は……」

「ナニ、植田様の御陣屋――」

金蔵はやっと、店先に立ってものをたずねている旅の人に眼をうつした。