Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
再三辞するもきかず一室に招ぜられた兵馬は、そこに坐って手持無沙汰に待っていながら、つらつらこの家の有様を見ると、別に男の気配も見えないし、茶道具とか花とか風流がかったもののみ並べてありますが、しばらくすると絹ずれの音がさやさやと、
「お客様、御退屈でござりましょう」
さきの女は、しとやかに入って来たので、
「いや別に――」
兵馬は取って附けたような返事。
「もう歇みそうなもの」
「ごゆっくりあそばしませ」
戸外では松の枝が折れたらしい。風雨の容易に止みそうもないのをもどかしがっている兵馬には、この女と差向いのように坐っていることが気が咎めるようでなりません。
ここはいかなる人の住居で、この少女は娘であろうか、それにしてもこの花やかな御守殿風は……とようやく不審にも思われてきましたが、深く推量すべき必要はないことで、雨が霽れてしまうと兵馬は厚く礼を述べて、この家を立ち出でました。
二十六
雨が上って兵馬を帰してから暫らくたって、
「お松や、さっきの若いお方はお前の知合いなのかい」
「いいえ、雨に降り込められて門前で困っておいでのようでしたから……」