Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
けれど、無いものは無いのだ。何と致し方もない。役者は肚をきめた。
『お言葉たしかに承引致しました。しかし、増上寺は永年手許不如意にて、既刻の話にては、ご無心に三千両足りません。とは言いましても、半刻ほどお待ちくだされば心当たりの筋から用達て参り、ご満足をはかりたい』
土方と、万理小路は眼を見合わせた。土方が万理小路の耳に囁くと、万理小路は役者の背中の上から太い声で、
『分かった。うろたえて騒ぎまわれば寺のためにならぬ。半刻の猶予は余儀なく思う。待つ、早く用達て参れ』
と、圧するように言った。
役者が庫裡の大戸を開けて出ようとすると、そこに見張っていた六、七人の武士が忽として取りまいた。役者は取り巻かれたまま、七代将軍の霊廟有章院別当瑞蓮寺へ行って、まだ明け方の夢がさめない庫裡を叩いた。
即座に三千両は都合になった。増上寺の庫裡へ戻って土方と万理小路の脚下へ、都合五千両が並べられた。土方が合図をすると、大戸の方からも、厨房の方からも十四、五人の武士が駆け込んできて、五千両の金を何処ともなく運び去ったのである。
土方晋は、後の土方伯であった。
翌年の七月、こんどは白昼、土方らは増上寺へ押し込んできた。