Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
団栗は、楢の木に実るのが第一に粒が大きく次が椚、樫という順になる。猪は団栗が大好物で、楢の実をふんだんに食った奴こそ、猪肉の至味として人々から珍重されているのである。
折りから八月の末近く南国とはいいながら、車の窓に輾転する峠の山々にどこか秋の気が忍び寄って、山骨を掩う木の緑の葉も、艶彩のさかりを過ぎていた。やがて、遠からず団栗も色づいて、猪の肉を肥やす季節がくるのであろうなどと、まことにのんきなことを考えながら、峠のてっぺんの茶屋の縁台に梨子を噛って、四方の風景にながめ入った。
ところが私は、大した事件を発見した。それは矢の川峠を下って、尾鷲駅から汽車に乗るとき買った大阪新聞の産業欄に、このたび理化学研究所で、団栗から清酒を醸造することを発明し、全国各県の県農会に依頼して、大々的に団栗を集めるという記事を読んだのである。そして、その記事の終わりの方に、和歌山県農会当局の談として、本県でも理研からの依頼により晩秋になったならば、全県の小学生を動員して、山林から盛んに団栗を拾わせる。たしかな見当はつかないが、およそ全県で二、三万石は集まるであろう、というのがあったのだ。