Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
席に復すると生駒君が、
『柳沢伯が来ている。感心に良く来る人だね』と言う。
見ると直ぐ左のボックスに腰をかけて、居眠りをしている人が柳沢伯だ。痩躯に薄茶の背広を着け、赤靴をはいた貴公子だ。
いよいよ大隅の娘景清が始まった。聴衆鳴りを鎮めて、一心に大隅の幅広い顔を見る。この人は一口語ると手布で口を拭う。それが愁嘆場へ行くと非常に頻繁になってついには手に持った手布を打ち振るようなことをする。聞く人の眼障りになる。大隅が語り出すと私らの右の方の空席へ二人連れの女が入った。横眼で見ると岡田八千代女史と呂昇君だ。八千代女史はしばしば呂昇に向かって質問を発するので、呂昇はうるさいという顔付きで答えたが、その言葉は私らには聞き取れなかった。
大隅は一時間余りも語り続けて漸く済んだ。途中で大きな欠伸をしながら帰る人もあった。この人の義太夫はさきの年大阪へ行った時、一度聞いたことがある。その時はもっと潤いがあるように思ったが、今度は何故か蝋盤の摺り切れた蓄音機を聞くような心持ちで聞いた。
帰途、美音会も大分芸人の種に尽きたと思った。(明四五・一『ホトトギス』所載)