Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ ほととぎす
小説 不如帰
徳冨 蘆花
Lesen Sie 小説 不如帰 (しょうせつ ほととぎす) von 徳冨 蘆花 (とくとみろか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.742 Zeichen · 256 Bildschirme
もしそれほど不運なるべき身ならば、なにゆえ世には生まれ来しぞ。何ゆえ母上とともに、われも死なざりしぞ。何ゆえに良人のもとには嫁しつるぞ。何ゆえにこの病を発せしその時、良人の手に抱かれては死せざりしぞ。何ゆえに、せめてかの恐ろしき宣告を聞けるその時、その場に倒れては死なざりしぞ。身には不治の病をいだきて、心は添われぬ人を恋う。何のためにか世に永らうべき。よしこの病癒ゆとも、添われずば思いに死なん――死なん。
死なん。何の楽しみありて世に永らうべき。
はふり落つる涙をぬぐいもあえず、浪子は海の面を打ちながめぬ。
伊豆大島の方に当たりて、墨色に渦まける雲急にむらむらと立つよと見る時、いうべからざる悲壮の音ははるかの天空より落とし来たり、大海の面たちまち皺みぬ。一陣の風吹き出でけるなり。その風鬢をかすめて過ぎつと思うほどなくまっ黒き海の中央に一団の雪わくと見る見る奔馬のごとく寄せて、浪子が坐したる岩も砕けよとうちつけつ。渺々たる相洋は一分時ならずして千波万波鼎のごとく沸きぬ。
雨と散るしぶきを避けんともせず、浪子は一心に水の面をながめ入りぬ。かの水の下には死あり。