Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
彼女の授乳の合間を母親の貧弱な乳房に縋りついている赤ん坊は、乳首が痛くなるほどたちまち彼女の乳を呑み干した。それから二十町あまりの道を歩いて帰るのに、彼女は四十分から五十分、どうかすると一時間近くもかかるのだったが、それだけの時間で彼女の乳は原状に復り切れなかった。そして、また三、四時間もするとすぐに豊富な乳房を持っていかなければならなかったので、彼女は自分の赤ん坊にはミルクをもって補ってやらねばならなかった。しかし、彼女はそれをあまり哀しいことに思わなかった。それで自分たちの生活が完全に保証され、子供のうえにも明るい太陽の招来されることが思われるからだった。
彼女は自分と同じ棟の長屋に住む近所の少女を雇って留守を任せ、自分の赤ん坊をその少女に預けては毎日毎日、高台の豪壮な邸宅と貧民窟街の襤褸長屋との間を往復した。
彼女がそうして朝田社長の邸に通いだしてから五日目の朝、彼女の赤ん坊は急に母乳を離れてミルクについたためか、熱を出したのだった。
しかし、彼女は気にはしながらも少女に赤ん坊を任して、朝田の邸へ奉公に出かけた。朝はまだそうでもなかったのが、昼に出かけるときにはもはやひどい高熱だった。