Japanische Klassiker mit Furigana
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あくまのかお
悪魔の顔
野村 胡堂
Lesen Sie 悪魔の顔 (あくまのかお) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.677 Zeichen · 29 Bildschirme
物騒な話題
物騒な話題
「そんな気味の悪いお話はお止しなさいませ、それより東京座のレヴィユーが大変面白いそうじゃ御座いませんか」
と話題の転換に骨を折って居るのは、主人石井馨之助氏の夫人濤子、若くて美しくて、客が好きで物惜みをしないというので、苟も此邸に出入する程の人達から、素晴らしい人気のある夫人でした。
が、その美しい夫人の魅力を以てしても、其晩の話題ばかりは、何うすることも出来なかったのです。贅沢な接待煙草の煙が濛々と立ちのぼる中に、不思議な邪な陶酔にひたって、男客達は「犯罪」の話に夢中になって居たのです。
「マア、そう言うなよ」
主人の馨之助は、丸々と肥った手を振って美しい夫人を婦人客の方へ追いやり乍ら、
「物を盗まれるのは油断があるからで、盗む方ばかり責められないと同じ筆法で、私は殺される人間もあまり賢こくないと思いますよ、つまり殺される方に油断があるから、ツイ殺し手の方も誘惑されると言ったわけでしょう、そんなもんじゃありませんかネ、ハッハッハハ」
見事に禿げ上った前額を撫で上げ乍ら、ビール樽のような腹を揺り上げて、カラカラと笑いました。
「イヤそんな事はありません、御主人のお説が本当なら、殺される人間は皆馬鹿で、刺客の手に斃れた有名な政治家も、痴情関係で殺される市井の遊蕩児もあまり変らんことになります」