Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

夜のカンカンに冷たい舗道の上を、グルグル湯気にとりまかれた。支那蕎麦屋の灯が通おっているきりで、二人共沈黙って白い肩掛を胸にあわせた。

二階に上って行くと、たい子さんはいなくて、見知らない紺がすりの青年が、火のない火鉢に、しょんぼり手をかざしていた。

恋人かな……私は妙に白々とした空間をみやっていた。寒い。歯がガチガチふるえる。

「たい子さん帰えられなければ寝られないの?」

時ちゃんは、私の肩にもたれて、心細げに聞く。

「寝たっていゝのよ、当分こゝにいられるんだもの、蒲団出してあげるよ。」

押入れをあけると、プンと淋しい一人ぐらしの匂いをかいだ。たい子さんだって淋しいんだ……大きなアクビにごまかして、袖で瞳をふくと、うすいたなの下に時ちゃんをねせつけた。

「貴女は林さんでしょう……。」

その青年はキラリと眼鏡を光らせて私を見た。

「僕山本虎造です。」

「あゝそうですか、たいさんに始終聞いてました。」

なあんだ、しびれの切れた足を急に投げだすと、寒いですねと云う話からほぐれて来た。

色々話していると、段々この青年のいゝ所がめにたって来る。

――私は一生懸命あいつを愛しているんですが……。