Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Lesen Sie 新・水滸伝 (しん・すいこでん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 684.899 Zeichen · 1374 Bildschirme
ずっと入ってゆくと、かどぐちの左右には、朱塗り金箔の聯牌がみえ、一方の華表には「世間無比酒」。片方には「天下有名楼」と読まれる。
階上は五楼にわかれ、江を望む風光は、どの欄に立ってもただ恍惚たるばかりであった。万畳の雲なす遠山は、対岸の空に藍か紫かの襞を曳き、四川くだりの蓆帆や近くの白帆は、悠々、世外の物のようである。
ほかの粋客であろう。箏や胡弓の奏でがどこかに聞え、楼畔の柳はふかく、門前の槐のかげには、客の乗馬がつないであった。すべてこれ、一幅の唐山水の絵であった。
「お客さま。ほかのお連れさまは?」
みせの女中の声に、
「いや、ほんの気散じで、ふらと一人で上がったのだが、一人客はご迷惑かね」
「いいえ、そんなことはございません。どうぞごゆるりと」
「ではお酒をたのむ。菜、肉、汁、料理はおまかせしておくから」
欄を前に、一室の卓で、宋江は独り暢びやかに病後の心を養った。酒はよし、包丁もよし、器なども、さすが「天下有名楼」であった。
「……わが故郷にも、名山古跡はないでもないが、やはり江州は違ったものだな」
心は、雲の遠くにまで遊び、ふと故郷にある老父や弟までを想いおこした。