Japanische Klassiker mit Furigana
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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
Lesen Sie 日本の諸国物語 (せっしょうせき) von 楠山 正雄 (くすやままさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.040 Zeichen · 158 Bildschirme
そのうち雪がそろそろ解けはじめて、時々は森の中に小鳥の声が聞こえるようになって、春が近づいてきました。保名は毎日親切な娘の世話になっているうち、だんだんうちのことを忘れるようになりました。それからまた一年たって、二度めの春が訪れてくる時分には、保名と娘の間にかわいらしい男の子が一人生まれていました。このごろでは保名はすっかりもとの侍の身分を忘れて、朝早くから日の暮れるまで、家のうしろの小さな畑へ出てはお百姓の仕事をしていました。お上さんの葛の葉は、子供の世話をする合間には、機に向かって、夫や子供の着物を織っていました。夕方になると、保名が畑から抜いて来た新しい野菜や、仕事の合間に森で取った小鳥をぶら下げて帰って来ますと、葛の葉は子供を抱いてにっこり笑いながら出て来て、夫を迎えました。
こういう楽しい、平和な月日を送り迎えするうちに、今年は子供がもう七つになりました。それはやはり野面にはぎやすすきの咲き乱れた秋の半ばのことでした。ある日いつものとおり保名は畑に出て、葛の葉は一人寂しく留守居をしていました。お天気がいいので子供も野へとんぼを取りに行ったまま、遊びほおけていつまでも帰って来ませんでした。