Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
「どこにいるか云わなくって、あんたのところへまた来やしない」
「わからない、あたしあなんにも知らない、ただ思いだしたから聞いてみたまでのことさ、でもなにか言伝があるなら云ってあげるよ、たいてい来やしまいと思うけどね」
「お願いよ、おもんちゃん」息詰るような声でおせんは云った、「――会ったら云って頂戴、あたし生きてるって、平右衛門町の中通りにいるって、待っているって、そう云って頂戴、ねえ、待っているって、……」
風はないがひどく凍てる夕方だった。寒いからであろう、背中でしきりに子供がぐずった、しかしおせんはあやすことも忘れた。お店へ仕上げ物を届け、手間賃と次の仕事を貰って家へ帰るまで往き来とも殆んど走りつづけた。そのあいだに庄吉が来ているかもしれない、留守で帰ってしまったらどうしよう。そう思うと足も地につかない感じだった。
――もちろん誰も来てはいなかったし、来たようすもなかった。おせんはその夜いつまでも寝ることができず、二時の鐘を聞いてからも行燈をあかあかとつけ、こごえる手指に息を吹きかけながら、足袋のこはぜをかがっていた。
――本当に庄さんだろうか、もしそうならどうして此処へ来て呉れないのだろう、おもんちゃんを訪ねるくらいなら此処だってわかる筈だのに、……それとも人が違うのかしら。