Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
「ああおいでよ、うちのがああ云うんだからなんとか出来るさ、でもあのひとあんたとどんなわけがあるの」
「あとで、あとで話すわ、おばさん、あたしすぐいきますからね」
子供に粥を喰べさせるあいだも、もどかしいおちつかない気持で、思わず叱る声のとげとげしさに幾たびもはっとした。自分は喰べないでそこそこにしまい、子供を抱いて梶平へいった。――仕事場のほうからはいってゆくと、店の裏にある長屋のかどぐちに、友助の女房が子供を負って誰かと立ち話をしていた。おせんが近寄ってゆくと、手を出してすぐに幸太郎を抱きとり、「向うの置き場のところにおいでな」と云って、あたふた店の脇のほうへいった。
新しい木肌をさらして、暖かい日をいっぱいにあびて、角に鋸いた材木がずらっと並んでいる。あたりは酸いような木の香がつよく匂い、すぐ向うの小屋から職人たちの鋸いたり削ったりする音が聞えてくる。おせんは苦しいほどに胸がときめいた、たぶん蒼くなっているだろう、そう思って額から両の頬を手でこすった。あしかけ三年ぶりである、白粉をつけ紅をつけたかった、髪も結い着物も着かえて、いくらかでも美しい姿をみて貰いたかった。