Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああちゃん、かんにんよ、こうぼいい子よ、めんちゃい――」

おせんは喘いだ、髪が逆立つかと思えた、そして狂気のように引返して走りだした。

子供は泣いていた。ねんねこをひきずりながら、地面の上を四五間もこっちへ這いだし、こくんこくんと頭を上下に振りながら、ああちゃんいやよ、ああちゃんいやよと声いっぱいに泣き叫んでいた。――おせんはとびつくように抱きあげ、夢中で頬ずりをしながら叫んだ。

「ごめんなさい幸坊、悪かった、悪かった、ああちゃんが悪かった、ごめんなさい」

しがみついてくる子供の手を、そのままふところへいれて乳房を握らせ、片方の乳房を出して口へ含ませた。

「捨てやしない、捨てやしない、どんなことがあったって捨てやしない、どんなことがあったって」

おせんはこう叫びながら泣いた。

「――幸坊はあたしの子だわ、あたしが苦労して育てて来たんじゃないの、誰にだって捨てろなんて云われる筈がないわ、たとえ庄さんにだって、……ねえ幸坊、あたし幸坊もう決して放しゃしなくってよ」

子供は泣きじゃくりながら、片手できつく乳房を握り、片乳へ顔のうまるほど吸いついていた。おせんはやがて立ちあがり、抱いたまま上からねんねこでくるみ、包を持って、やや風立って来た道を家のほうへ帰っていった。