Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme

Aozora Bunko

おせんは一つでも惜しい餅ではあったけれど、見ていられない気持で三つ出し、網を火に架けたり小皿に醤油を注いだりした。ふっくらと焼けてくる香ばしい匂いが立つと、おもんは生唾をのみのみ活溌に話し始め、この頃は面白いように稼ぎのあること、世間の不景気なときは自分たちのほうがふしぎに客の多いこと、この調子なら間もなく、小さな家くらい持てそうなことなど、なにかが逃げるのを恐れでもするようにせかせかと語り続けた。そしておせんが焼けたのを小皿に取って出すと、話に気をとられているというようすですぐ口へもってゆき、三つともきれいに喰べてしまった。

「人間どうせ生きているうちのことじゃないの、あんたなんか縹緻がいいんだもの、こんな内職なんかであくせくしているのは勿体ないわ、苦労するのも一生、面白く楽しく、したいようにして生きるのも一生だわ、ねえ、あんただって好きでこんな暮しをしているわけじゃないでしょう、ぱっと陽気に笑って暮す気にならない、おせんちゃん」

むりに元気づけた調子でそんなことを云いだした。思いだしたように鋏を借りて指の爪を切り、これから浅草寺のおにやらいにゆくのだがなどと云って、なお暫くとりとめのない話をしたうえ、吹きはじめた夜風のなかへと出ていった。