Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
「そんならなぜ」お勘も蒼くなった、「――それが本当ならなぜ独りでいるんだい、どうしてその人のところへ嫁にゆかないんだい」
「あたしは、あたしはそんなこと云っちゃいないわ、そして、そんなことはおばさんの知ったことじゃないじゃないの」
「どういうわけでその人はあんたを貰いに来ないの」お勘は平べったい顔をつきだし、眼をぎらぎらさせながら喚いた、「――その人は帰って来たんだろ、会って話もしたというじゃないか、それで嫁に貰わないってのはどういうわけさ、おまえさんのほうであいそづかしでもしたってのかい」
「あの人のことはあの人のことよ、あたしは自分のことを云ってるんだわ、あたしがちゃんと待っていたことを、この子はあたしの子じゃ……」
おせんの舌はとつぜんそこで停った。幸太郎の悲鳴のような泣きごえが耳に突入り、縋りついている幼い手の、けんめいな力が彼女をよびさましたかのようだ。とりまいている群衆の眼にきづいた、お勘はますます喚きたてる。自分はなにをしたのだろう。なんというばかな恥ずかしいことを、――おせんはがたがた震えながら、幸太郎を抱いて歩きだした。そこにいる限りの人がおせんを眺め、嘲りと卑しめの言葉をその背へ投げた。