Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
文句も初めて聞くものではあったが、記憶のどこかに覚えのあるような気がする。……つむった眼の裏に母親のおもかげが浮んだ、九つの年に亡くなった母の、いつも寝たり起きたりしていた病身らしい蒼白い顔、――その母が自分を抱いて、背中を叩きながら唄って呉れている。向う山に鳴く鳥は、ちゅうちゅう鳥かみい鳥か。おせんは切窓に倚りかかって両手で面を掩いながら噎びあげた、外ではなお暫く松造の唄うこえが聞えていた。
その夜また泊って明くる朝。松造は草鞋を穿いてから思いついたように、お常の風呂敷包にある物は使えたらおまえが使うがいいと云った。それから、おせんのことは亡くなった勘十からも聞いていたし、こっちへ来て友助から聞いたこともある、いろいろ事情があるらしいが、自分はそれに就いてどんな意見も持ってはいない。だがお常がひき取って世話をした、その気持を亡くなった者のために続けてやりたいのである。自分たちは三人兄妹であったが、下の妹を火事でとられお常を水でとられて、とうとう自分ひとりになってしまった。これも約束ごとというようなものだろうが、――そういう意味のことを溜息まじりに、ぶあいそな調子で述懐していった。