Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
なんとなくおせんの眼を避けているようだった。どうしたのかしら、水を汲んでゆきながらおせんは微かに不安を感じた。
「済まないもう一杯くんな」源六は湯呑の水をたてつづけに三杯もあおった、「……何百ぺん云っても酔醒めの水はうまいもんだ、若いじぶんまだ酒の味を覚えはじめた頃だったが、酔醒めの水のうまさを味わうために、まだうまくもない酒を呑んだことさえあった」
「ねえお祖父さん」と、おせんは源六の眼をみつめながら云った、「……杉田屋さんではなにか御用でもあったんですか」
「そうなんだ」源六はなにか思案するように、ちょっと間を置いて頷いた、それから仰向けに寝たままで、しずかにこちらへ顔を向けた、「……話というのはな、おせん、正直に云ってしまうが、おまえを嫁に呉れということなんだ」
まあとおせんは打たれでもしたように片手で頬を押えた。源六はそれを見て眉をしかめ、良心の苛責を受ける者のように眼を伏せた。そして重たげに身を起こし、自分で湯呑に水を注いで喉を鳴らしながら飲んだ。
「それで、お祖父さんは、どう返辞をなすったの」
「おまえには済まないが断わった」
「…………」
「本当に済まないと思う、杉田屋はあれだけの株だし、幸太はどこに一つ難のない男だ、そればかりじゃあない、杉田屋の御夫婦とおまえとは、乳呑み児のじぶんから馴染だ、おまえは