Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
そんな風にしみじみと繰り返し云った。少しも誇張のない、すなおな諦めのこもった調子である。――死ぬなどと云ってはいけない、治って貰おうと思えばこそ出来ないながらしてあげるので、石にかじりついても治って呉れなければ。おせんがそう云うと、きれいに澄んだ眼で頷きはするが、心ではもう自分の死ぬこと、それは間もなくだということを知っていたようである。
「わたしずいぶん苦労したわ、思いだすと今でも身ぶるいの出るような、苦しい、みじめなことがあったわ、――でもこれでようやくおしまいになるの、死ぬことは楽になることだわ、あの世というところは静かで、いつもきれいな光があたりを照らし、いろいろな花がいっぱい咲いているように思うの、そこへゆけばもう憎むことも騙すこともない、なにもかも忘れて悠くり休むことが出来る、決してもう苦しんだり悲しんだりすることはないの、……あなたにわかるかしら、おせんちゃん、あたし待ち遠しいくらいなのよ」
おもんが亡くなったのは十月下旬の、すさまじく野分の吹きわたる夜だった。彼女はおせんを枕許に坐らせ、その手を握って、じっとなにかを待つようにみえた。