Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme

Aozora Bunko

「下谷へまわるぜ」とか「ああとうとう駿河台へ飛んだ」とか「いま焼けているのは明神様じゃあないか」などという言葉が、風にひきち切られてとぎれとぎれに聞えてくる。

「また大きくなるんじゃあないかしら」

おせんが眼をつむったままそう云った。源六はそれには答えず、やや暫くして、

「風が変ったな」と独り言のように呟いた。裏の魚屋の女房が来たのはそれから間もなくだった、表の戸を叩きながら呼ぶので、おせんが着物をはおって起きていった。

「のんきだねえおせんちゃん寝ていたのかえ」とおらくはまだ明けない戸の向うで云った、「……火が下谷へ飛んでこっちが風下になったよ、出てごらんな大変だから」

「さっき見たんだけれど」

おせんはそう云いながら雨戸を明けた。すると、いきなりぱっと赤い大きな火の色が眼へとびこんだ、こっちが見たというより、火明りのほうでとびこんだという感じだった。向うの家並はまっ暗で、その屋根の上はいちめんに赤く、眩しいほど空いっぱいに弘がっていた。

「……まあずいぶんひろがったわね」

「そんなこともないだろうけど、手まわりの物だけでも包んで置くほうがいいね、うちでもとにかくひと片付けしたところだよ、なにしろここにはお祖父さんがいるんだから」