Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
……だが、やがて空想がいろ褪せて、入れかわって彼の脳裏を占めた村々の有様は、あまりにも救いのない陰惨な光景だった。しかし、そのとき彼は思った。被害地の人々がそれぞれ信仰に入ったならば、この現実のみじめさも、精神のうえで救われるにちがいないと。
永島は明け暮れ、自分の魂の救われんことを祈るとともに、神の導きによって人々が信仰に入ることを祈った。一方では家族のものにむかって、親戚にむかって、或は友人知己にむかって、毎日々々信仰をすすめる手紙を書き送ることが日課となりだした。
するとある日のことである。いつもの担当の看守が、コツコツと尊大ぶった靴音をたてて通りかかったが、急に「二〇八号」と叱りつけるように呼んで立ち停った。
「お前には、もう今日かぎり手紙は書かせんぞ」
「なぜですか。どうしていけないのですか」
永島は驚いて格子につかまりながらきいた。
「お前らに手紙を書くことが許されているのはなんのためだか考えてみろ。弁護士を頼むとか、証人を立てるとか、証拠物件を取り寄せるとか、とにかく、なにか事件に関する用件の場合にのみ許されているのだ。それだのにお前の書くことといえば、やれ神がどうの、基督がどうしたの、というようなことばかりだ。