Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
いったいお前は監獄をなんと心得ている。そんな気楽な世迷事を書く場所じゃないぞ。書きたかったら、いくらでも娑婆へでてから書け、娑婆へ出てから」
最近の永島は殊に、看守の言葉に唯々諾々として、微塵も、反抗らしい気配を見せることはなかったのだが、
「それは担当さん、あなたの目からは気楽な手紙と見えるかも知れませんが、私にとっては、実に事件の成行より大事な、一生懸命の手紙です」
「じゃ貴様は、罪が三年になろうが五年になろうが、かまわんというのか」
看守は脅すように睨みつけた。だが、永島にはそれにたじろがぬだけの信念ができていた。
「いや、私が毎日手紙を書く気持は、恐らく信仰のない人には解りますまい。だが、それは別として、とにかく発信の自由というものは、天皇陛下が御裁可になった監獄の規則によって与えられているのでしょう。あなたが若しどうしても許さぬというなら、仕方ない、私は典獄殿に訴えます」
さすがに看守もこれには一言もなく、いまいましそうに舌打ちして靴音荒く立ち去った。
やがて獄窓をかすめる雲の行き来にも、降る雨の勢にも、はや外界には初夏の季節がきたことが知られた。