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Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

と、東儀与力の真っ黒に濡れた姿が、木像蟹のように、岸へ這い上がった。

「あれに、井戸がある」

と、羅門塔十郎は、彼を抓んで来て、頭から釣瓶の水を浴びせかけた。そこへ、部下たちの提灯が、遅ればせに、集ってくると、彼はかえすがえすの失策に、何か、持ち前の呶号を発したくなッた。

「うろたえ者め、ここに用はない。郁次郎を追えッ、郁次郎を」

「えっ」

部下たちは、初めて知ったように、

「――彼奴! 逃げたのか」

「たった今だ、ふいを狙って、此方を河へ突き落すと、白魚橋を越えて、北河岸へ疾走した。すぐに行け」

白魚橋の藍い空を、乱れた提灯の影が点々と駈け出して行った。――むろん東儀が河の中からそこに認めた郁次郎は、とうに夕闇の深くへその姿を晦ましていた。

そこへ、同心の加山耀蔵が、自身番から一襲ねの小袖を抱えて飛んで来た。

「与力。お着更えを持参いたしました」

「加山じゃないか」

「は」

「何をしておったのだ、何を」

と、東儀は誰の顔を見ても八ツ当りである。

「――貴公、わしが河へ突き落されたのを知っていたなら、なぜ、衣類を取りに行くよりも、郁次郎めを先に追いかけなかったのだ」