Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「くどい」
と、東儀は心づよく言い放って、
「罪がなければ、ご息女の身も、無事に帰されるであろうし、犯した科があれば、いかに、非常なご手段をもって哀願されても、むだな事だ。それが、法の公明正大と申すものじゃ」
「ちぇッ。……情けを知らぬ武士め!」
「なんだ!」
と、東儀は、憎々しげに睨み返して、
「法の前には、何ものもないわ!」
「ええ、しまった。――娘ッ」
脾腹から抜いた血の刃が、無念そうに持ち直された。よろよろと立つと、それを杖にして、庭先へ転げ落ちた。
「――娘ッ。――花世」
「おおっ……」
捕方の手を振り払って、花世は、狂女のように、父の方へ、しがみついて来た。と、五百之進は、その手へ、ふいに、血みどろな脇差を渡して、
「斬りやぶッて逃げろ! 父も、助勢してつかわす」
と、つよく言い含めた。
「あっ」
羅門塔十郎は、身を退くや否、うしろへ廻って、抜き打ちに、五百之進の肩から背にかけて斜かいに斬り下げた。――同時に、狼狽した東儀与力も、花世の方へ、十手をつかんで、飛びかかったが、びゅっ、と刃の先から飛んだ血が顔へかかって、思わず怯んだ途端に――
「逃げたッ」
と、不意を衝かれた捕手たちの慌てた声が、ばらばらと彼方へみだれた。