Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「菊ヶ浜から休みなしに急いで来たので、すっかり喉が渇いちまった。……したが旅もだいぶ楽になったね」
「ほんとに、春めいて参りました」
「ところで姐さん、矢走の渡船場から四明ヶ岳の方にはいるには、この街道一筋だろうね」
「はい裏道はございません。大津を越えて、京都へはいればべつでございますが」
「それじゃ途方もねえ遠廻りだ。……妙に、いろんな事を訊くようだが、今朝から今までの間に、年のころ二十歳ぐらいな、背のすらりとした美い女が、やっぱり旅支度で、ここを通ったのを見かけなかったかい」
「ひとり旅のお若い方でございますか」
「色が白くって、柳腰。無造作に手拭で髪を包んでいるが、都者というのは一目でわかる」
「さあ? そんなお方は、お見かけしないと思いましたが」
「はアてね」
と、旅商人の男はひたりと、頬へ手をやって、
「そんなはずはねえんだが」
と、しきりと、湖畔の街道筋へ眼を送っていた。
と、一挺の駕が、彼の眼を揺すッて通った。
唐崎や浮御堂の景色へ、駕屋は、指をさしながら何か大きな声でしゃべッて行った。湖水の案内をしているらしい。で、そッちへ向っている駕のタレは捲り上げてあったが、茶店の方の側からは、誰が乗っているのか、中は見えない。