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Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

おれは今、大きな功名の機会にぶつかっている。きっと、そいつを掴む。――上役の勘気にふれて、役名を剥がれても、俺は俺として、前の不名誉をそそぎ、東儀与力を見返してやるくらいな働きをするつもりだから、見ていてくれ。

若い八弥の心は、情熱燃えるような血のなかで、そう遠くへ、叫んでいた。

「おやっ。降りたぞ」

突然、八弥は並木の蔭へ跳んだ。――そして傘を伏せたように、すぽっと、合羽の裾をひろげて屈まりながら、鋭い眼を、彼方に向け直した。

いつのまにか、道は湖岸を離れて山蔭の道にはいっている。

駕は、道祖神の石の前に止っていた。

「ご苦労でしたね。……尠ないけれど」

女は、駕屋の卑しい眼に背を向けて、淋しそうな風もなく、ひとりで深い山ふところへ向って歩み出した。風のない山蔭は、二月の草萌えが匂って、寒くなかった。

「おそろしく気前のいい女だな。だまって、二朱金と来た。近頃の客にゃ、珍しい」

「ふふん……」

と、駕屋は、掌の上の金の色と、女のうしろ姿を見くらべながら、

「あんなのなら、ただで乗せてやってもいいと思ったのによ」

「さ、戻ろうぜ、金が木の葉に化けるといけねえや」