Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
なあ、東儀殿」
「まるで違ッておる」
そう言われると、加山耀蔵も、人違いな気がして来るのだった。もし今の女が花世と別人であるとすれば、これは、こんどの事件の上に、由々しい問題でなければならない。
きょうまで、事件の裏を縫って、陽炎のように幾たびとなく姿を見せている女は、して見ると、花世ともいえるし、また花世ではなかったということにもなる。
(はてな……こいつは?)
と、耀蔵は、考え直した。
黙々と、警固の行列について歩いてゆく間に、彼は、塙郁次郎の軍鶏籠を見つめて、この時初めて、怖ろしい大難関にぶつかったのであった。
(これや変だ)
という気もちが、何か、微妙なものの暗示のように、胸をかすめたのである。そして、心しずかに、眼をふさいで数里の街道を歩いて来るうちに、
(そうだ! これは一つ)
と、密かに、ある決心を固めて、不意に、列を脱して、八ツ山口から単独に、何処かへ、ぷいと姿を晦ましてしまった。
父愛の鞭
「ああ、物憂い春だ……。わしはこの頃すこしどうかしとる」
鶉坂の江漢先生は、愛縄堂の縁に、ぼんやり腰をおろしていた。自分で呟いているとおり、ほんとに、少しどうかしている顔いろであった。