Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

読み終ると、老人は憮然としながら、白い顎の髯をいらいらと指に捲いて考え込んだ。

「どうじゃ、老人」

「ウウム……」

「それで、確と、得心がついたであろうが」

「いや!」

と、烈しい眼を上げると、老人は、さっと、白髯を横に振って、

「まだ分らん! まだ分らん!」

「なぜ?」

と、主計頭がだいぶ激した。

「この調書のうちに、しばしば認めてある、覆面の浪人とは、何者のことか」

「それが即ち、おてまえの息子、郁次郎のことじゃ」

「事実、その覆面を剥いで見られた場合がござるか」

主計頭はグッと詰った。

「また!」

と、老人は調書を叩いて、

「女笛師の死骸、江の島の巫女の死体、そのいずれも、左の手の指が切り取られてあるようじゃが、この下手人が、何のために、死骸の指を切りとるのか、そこの調べが一向についておらん。奉行はそのことについて、何ぞ、明白に吟味をお遂げなされたか」

「さ……それは」

「まだある!」

老人は、敵の陣へ迫る猛将のように、膝をひらいた。

「この事件の発した当夜、即ち、十五夜の晩以来、各※(二の字点、1-2-22)方が、いわゆる郁次郎の化身と目されておる覆面の男と、例の唖男とは、明らかに、連絡のあることに相成っておるが、その唖男と、郁次郎とを、対決させておられたかどうじゃ」