Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「あれだ……」

と、あきれ顔に、

「親方、世の中にゃ、こんな不敵な女もあるもんでしょうか」

「どうせ、ひとすじ縄で行く女じゃあるめえ。逃げられねえように、要心していろ」

「はばかり様。おまえ達みたいな、町人根性ならしらぬこと、こうと度胸をすえた以上は、見ぎたなく、じたばたするような玉枝さんとは違うんだからね、安心おしよ」

「……親方、似ていますね、まったく」

「誰に」

「八官町の富武様のお嬢様と」

「ム、鶉坂の老先生も似ているとおっしゃったが、まったく、瓜ふたつだ。……だが、形は似ていても、心ときたひにゃ、雪と炭だ」

玉枝は、横を向いて、うす笑いをうかべながら、

「じゃ、おまえたちは、鶉坂の老いぼれに頼まれて、私たちの仕事の邪魔をしたんだね」

「それがどうした」

「おぼえておいでということさ!」

「けッ。この期になっても、まだあんな憎まれ口をたたいていやがる。――親方、また海へでも飛びこむと、探すだけでも手数ですから、ふン縛ってしまいましょう」

若い船頭たちから、親方とよばれている町人は、数寄屋河岸の釣舟師、舟辰だった。

明け方、老先生から事情をうちあけられて、焦眉の一策をさずけられると、侠気に富んだ舟辰は、一も二もなくひきうけて、若い者三名と共に迅舟をとばし、品川沖の鱚舟の群にまぎれこんでいたのである。