Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
東儀三郎兵衛は、もう事件の曙光を見せられたように、わくわくと、頼もしげに、
「して、その鍵とは?」
「やはりあの唖男だな」
「老先生のお考えもそこにござりましたか。して、その唖男を、何といたしますか」
「獄から出してやる」
「出して?」
「む」
「出して、それから?」
分らん男だなあというように、江漢老人はちょっと舌うちを鳴らして、
「逃がしてやるんじゃ」
「げッ!」
東儀与力は身ぶるいをした。そして、呆れ返ったように老人の顔をながめてしまった。一世の名探偵といわれた塙隼人も、老ゆれば駄馬に劣る麒麟にもひとしい。――ははあ、老先生もひどく耄碌をしなされたわい、とここへ訪ねてきたのが今さら悔やまれてくる。
「東儀」
「は……」
「何をわしの顔を見ておるのか」
「でも、奉行所としては、唯一の手懸りとしている唖男を放免せよとは、老先生にも似あわぬお考えかと……」
「ハハハハ、早合点をいたしておるな。放免せよといっても、それは一つの策、その前に、加山と波越に旨をふくませておいて、唖めが、牢を放されたら何処へ帰ってゆくか? ――その先をつきとめる。つまり唖は、傀儡じゃ」
「あ。――なるほど!」