Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
人物だ。
「まだ七刻前じゃ、観て進ぜる」
「あれだ……女というと」
下足番は、呟いて、不承不承に女を通した。女は、秋には早い、頭巾をかぶって、そのまま机の前に坐った。下足番が嫉ましげにつぶやくほど、眩しい若さだった。
「ははあ……」
と、乾坤堂はじッと見つめて、
「観てもらいたいというのは、男女のことでござるな。恋でござろう。そうらしい」
「ま……それもございますが」
と、女は顔を紅めて俯向きながら、
「ほかにも、もう一つ、大きな願い事が」
「ウーム、その願望ならば、かないましょう。いやきっとかなう。ご安堵なされい」
「ほんとに、かないましょうか」
「今に、西の方から、福音が訪れましょう」
「西の方から。――していつ頃」
「遠くはござらぬ。ここ一月ばかり以内」
「少々、思いあたることがございます。ですが、その願望が成就した後、私はある男から、去られることはないでしょうか」
「今の良人……とは言えぬ、まあ、約束をしたお相手じゃな」
「はい」
「手をお見せなさい。――イヤ、左の手」
と、女の手相をしげしげと眺めていたが、ひょいと、指の爪を調べて、
「おや、貴女には、妙な爪がある。この黒いのは」